雅楽と奏和会

雅楽について

当神社では、古くから「雅尚会がしょうかい」という伶人（雅楽を演奏する者）の方々により、大きな祭典においては雅楽の生の演奏を納めてきていただいております。
そして現在、習ってきた者たちで新たに「奏和会そうわかい」という会を作り、雅尚会の先生方に習い日々練習を重ねているところです。
氏子、地域の方をはじめ興味のある方々にも雅楽をより身近に感じてもらい、雅楽を継承していけるよう、毎週金曜日に集まって練習しております。

雅楽とは

雅楽とは、元来は「俗楽」に対する言葉で、正統の音楽を意味します。この意味の雅楽は中国や朝鮮にもありましたが、その音楽そのものは日本の雅楽とは全く別のものです。
日本の雅楽は、日本古来の歌と舞、古代のアジア大陸から伝来した楽器と舞が日本化したものおよびその影響を受けて新しくできた歌の総体で、ほぼ１０世紀（平安時代中期）には今日の形に完成した、日本のもっとも古い古典音楽であります。
主として宮廷、貴族社会、有力社寺などで行われてきましたが、現在では宮内庁の楽部が伝承する雅楽がその基準をなします。

雅楽の種類

雅楽には、その起源系統によって、「国風の歌舞くにぶりのうたまい」、「大陸系の楽舞」および「歌物うたいもの」の三つの種類がありますが、ここでは大陸系の楽舞のみ、紹介します。
大陸系の楽舞
５世紀頃から９世紀初めまでの約４００年間にわたって朝鮮・中国などから伝来したアジア大陸諸国の音楽舞踊に基づき平安時代に完成した器楽と舞です。
大和～奈良時代までは種々の外来楽舞はそれぞれ渡来したときの形で演奏されていましたが、平安時代には次第に整理統合され、日本化されていきます。すなわち、まずその伝来の系統により「左方さほう」と「右方うほう」に分け、　その楽器編成が区別　されました。左方は中国、中央アジア、インド方面に起源を有する楽舞に基づく物で、これを唐楽とうがくと呼びます。右方は主として朝鮮、満州方面に起源を有する楽舞に基づくもので、これを高麗楽こまがくと呼びます。また、演奏の形態により「管弦」と「舞楽」とに分けてその演奏技法が区別されました。さらに、多種の外来楽器は取捨選択され、楽編成は　小規模な室内楽形式に変わりました。
このような外来楽舞の一大変革と同時に、日本人による作曲、編曲、作舞も盛んに　行われ、ここにきわめて繊細、優美な日本独自の雅楽が完成したのです。

雅楽の演奏形態

雅楽には「管弦」、「舞楽」、「歌謡」の三つの演奏形態があります。
（１）管弦
大陸系の雅楽器で奏する器楽合奏です。現在では、もっぱら唐楽を演奏し、ほとんど高麗楽は演奏されません。 いわゆる「三管両絃三太鼓」の楽器編成で演奏します 。
「三管」とは、笙しょう、篳篥ひちりき、龍笛りゅうてきの三種の管楽器を、「両絃」とは琵琶および箏の二種の絃楽器を、「三鼓」とは太鼓、鞨鼓かっこ、鉦鼓しょうこの三種の打楽器をいいます。
管弦では管楽器が主な役割をなします。すなわち、篳篥が主旋律を奏し、龍笛が同じ旋律をやや装飾的に奏し、笙が和音をつけるのです。絃楽器や打楽器はリズム的な役割です。
当神社でも三管に太鼓のみの形で演奏することがほとんどです。

左から、笙、篳篥、龍笛。一番下は龍笛の仲間、神楽笛

（２）舞楽
音楽とともに奏する舞で、歌にともなって舞う「国風舞くにぶりのまい」と唐楽の伴奏で舞う「左舞さのまい」および主として高麗楽の伴奏で舞う「右舞うのまい」があります。

（３）歌謡
雅楽器の伴奏で歌う声楽です。

雅楽の文化的価値

雅楽には、以上のようにいろいろの種類や演奏形態がありますが、いずれも千年以上の伝統を有し、世界のもっとも古い音楽文化財として歴史的価値をもつものであり、宮内庁式部職楽部の楽師が演奏する雅楽は重要無形文化財に指定されています。
雅楽は、西洋音楽とは異なる様式や楽器による高い芸術的価値を備えており、とくにその和声と音組織に於ける高度の芸術的構成によって、現代音楽の創造、進展に大きく寄与するとともに、雅楽それ自体が世界的芸術として発展する大きな可能性を有しています。
以上、雅楽のうんちくについては麻生企画発行の文書を引用させてもらっています。

楽器の織りなすみやびな世界に、一度触れてみませんか。少しでも興味のある方、聞いてみたい方など、いつでも大歓迎です。雅尚会の方から習い始めて、みな間もない者ばかりです。みなそれぞれ家庭や仕事などを抱えながら、無理のないペースで取り組んでおります。悠久の歴史の中で、人々の祈りや感謝、悲しみなどあらゆる思いに寄り添ってきた、私たちの原点ともいえるこの音楽を、ぜひ五感で感じてほしいと思います。